ずっと存在していた
一人暮らしの自宅に戻った。
数日家族に看病され心配され、セルフイメージが12歳くらいの末っ子の自分になってしまい、調子を戻すにはまだかかりそうだ。
親の対応が、十代の頃体調を崩した自分へのものとほぼ変わらなかったことに静かに驚き続けた数日だった。
もう私は完全に良い大人だ。
でも、この人たちからすると、きっと私があと10歳年をとろうが、同じような看病をし、心配するんだということが伝わってきた。
揺るぎようのない愛情なんて、この世に存在しないと思っていたが、こんな近場にずっと存在していた。
そのことに気付かされた。
少し狂気じみてもいる。
あまりに巨大で揺るがない愛を、平然と、当然のもののように親は所持し、私に向けていたのだ。
私は随分長いこと、自立しなければと強く思っていた。
自立とは、一人で生きていけることだと単純に考えていた。
だから親からの愛情は、早々に断ち切っていかなければならないと思っていた。
浅はかだった。
こんな莫大な愛、戦って勝てるわけがなかったのだ。
最初から、負けていた。というか、間違っていた。
自立とはそんなことじゃない。
じゃあ、なんなのかと言うとちょっとわからないけど。
親が私を愛していることは、私が止められるものでは全然なかった。
私のことなどほぼ忘れて暮らして欲しい、みたいな気持ちだったが、そんなの無理な話だった。
親だけではない。
友人知人から向けられる優しさや好意も、そんなのしなくていいから!って気になりがちだった。
違う。
皆、私を好きなだけなんだ。
それはその当人の気持ちで、私が介入できることじゃない。
私は、その温かい気持ちを、素直に受けとれば良かったんだ。
一人相撲を、随分長い間してしまった。
青い鳥は近くにいた。
怪我の功名だ。