世界を救うおばちゃん
数日前、音楽を聴きながら人通りの少ない裏道を歩いていた。
それなりの音量で聴いていたのと、歩行者以外が通ることの少ない道だったので、完全に油断していて、後ろから走ってきた自転車に気づかなかった。
その自転車に乗っていた人は、大きな罵声を口にしながら、かなりのスピードで私のギリギリ横を通り抜けた。
イヤホンを飛び越えて聴こえてきた、普段耳にしない怒声に驚いて飛び退いた。
通りすぎながら、しばらくまだ何か文句を叫んでいたが、あっという間に駆けていったので、詳細な内容はわからなかった。
ダラダラ歩くな、邪魔なんだよといったことは言っていたように思う。
本当にびっくりして、息が上がった。
通常なら、しばらくは落ち込むような出来事だが、案外すぐ立ち直った。
私の前を歩いていた、中年女性数人の集団が、同じように驚いた後、私を振り返ってくれたからだ。
「びっくりしたわねー!」
「なあにあれ。危ないわね~」
「野良犬かと思ったよ!」
「やっぱり裏通りは危ないのね」
わいわいと彼女たちは発散するように話した。
全員少し小柄で、同じような体格をしていて、寒い夜だったので、モコモコと着込んでいた。
なぜか、ちいかわのキャラクターたちのような印象を受けた。
私は、驚きましたねえ……とゴニョゴニョ返して、早々に一人離れたが、なんだか気持ちが助けられたのを感じた。
きっと、彼女たちにとっては何の意識もしていない行動だったのだろう。
それが、通りすがりの私を助けてくれた。
私も彼女たちのようになりたい、と一人で歩きながら思った。