悪いことばかりじゃないさ
都会での暮らしに疲れてきている。
まずどこに行っても人が多い。
広々とした場所で一人、みたいなことを実行するのが難しい。
今まで生きていて、そんなことが難しくなることがまずなかった。
比較的都会と言える場所に住んでいた時も、少し歩くか電車に乗れば、田舎でなくても人の少ない大きめの公園くらいはあった。
それが贅沢と思える日が来ようとは。
人口密度の高さが自分にとってここまで弱点だとは思わなかった。
仕事も、新しいことを延々と覚え続ける日々だ。
人間関係も嫌われたら良くないとは思っているが、そうそう気を配るような余裕もなく、
こんなんで本当に大丈夫なのか?と毎日不安でいる。
そんな調子でいれば疲れるのも当然といえば当然だった。
今朝、鏡を見たら、自分の頭髪にいつもと違う印象を受けた。
まさか。
よく見れば、白髪があった。
今まで白髪が生えたことはない。
加齢と疲労がこんなありありと形になってしまうだなんて。
若ければいいとも、自分が老いてるともそんなに思っていないつもりでいたが、
白髪を見つけた瞬間のショックは凄かった。
うそでしょー!
叫びたいのを押さえ、生えている白髪を素早く抜いた。
やっぱり間違いなく白髪だった。
ただ、白髪は日に当たりキラリと光った。
白い鳥の羽を連想させるような、神聖さすら感じるような、妙な美しさがあった。
綺麗だ。
知らぬ間に、白髪に対してネガティブなイメージを抱いていた自分に気付く。
そして実際に自分に生えた白髪を目の当たりにしたら、思いがけない美しさがあった。
まだ当分は、どうかそこまで沢山生えないでほしい、とやはり思ってしまう。
だが、こんな綺麗な頭髪が自分から生えるのであれば、そう嫌うものでもないとも思えた。
実際に起きてみなければわからない。
良くも悪くもそんなことばかりなのに、
私は油断するとすぐ全部知ったような気になってしまう。
そうじゃないんだろう。
まだ、諦めるには早い。
もう駄目だ、の中で見つけるものが、きっと思いがけず輝くこともある。