渡り歩くため、戦うため、自分のため
服なんてどうでもいい。
というのが、基本的なスタンスだ。
できればずっと部屋着で居たい。
職場には無難で地味な服を着ていく。
でもそれは、オフィスカジュアルを意識してわざわざ購入した衣服だ。
本当にどうでもいいなら、もっとボロでいいから、私にも一応ラインのようなものが無意識にあるんだと思う。
3月以降、オフィスカジュアルを買ったのを除いては服を買わない暮らしだった。
無職生活と引っ越しの余波で余裕がない。
社会で渡り歩くために、仕事の服を買い、頭髪を整える。
それ以上は、できない。
秋になるから、仕事のためにブラウスの一枚でも買っておかねばと服屋さんに寄った。
セールでワンピースが売り出されていた。
なんとなく体に当てて、鏡を見た。
すごく可愛くて、可愛いものを体に当ててる自分の姿が嬉しくて、なぜか泣きたくなった。
ブラウスはやめて、ワンピースを買った。
着ていく場所なんてそんなに無い。
でも、この嬉しさを肯定したかった。
可愛いと嬉しい。
そんなことも忘れていた。
お金が全てだとは絶対に言えない。
でも、お金が無いことで私はここ数ヶ月、気持ちの余裕がなかった。
少しだけ自分の生活や気持ちを良くするものを手にとっても、「今はそれどころではない」と諦め続ける日々。
そういうみじめさから、可愛いワンピースを手に取った時、一瞬だけ解放された。
このワンピースでどこへ出掛けよう。誰と会おう。大分前に買ったイヤリングと合わせよう。
身だしなみじゃない、私のためのお洒落をして、遊びに行こう。
そういう気持ちが残っていたことが、嬉しかった。