娯楽としてのマクドナルド
しばらく、店員さん以外の人間と顔を合わせていない。
仕事は在宅勤務だし、一人暮らしだ。
友人とも電車に乗らないと会えない。会いに行くのは控えている。
家であっても漫画を読んだり動画を見たり、人によっては映画を見たりもするだろう。
そういった娯楽は以前と変わらず手にすることができる。
だが、やはり娯楽要素が足りない。
旅行、お出かけ、人と話す、外食。
仕方ないし、もともとアクティブな方ではない。
それでも、時々気持ちが切れそうになる瞬間はある。
もうダメだ。
その時、ふとマクドナルドを頼もうと思った。
モバイルオーダーができるというのを何かで見かけていたが、使ったことはなかった。
仕事終わりにすぐスマホで検索した。
モバイルオーダーは簡単だった。店頭で注文する代わりに携帯端末から支払いまでできる。
そして注文し、店頭に取りに行く。
最寄りの店舗までは20分ほど歩く。
久しぶりにマクドナルドの店舗まで来た。
明るい。
コンビニと同じ種類の、均一な明るさがある。
商品が準備され、受け取りだけ済ませてまた家までの道を歩く。
なんてスムーズなんだ!と感動した。
帰路、うっすら雨が降った。
傘などなく、体が少し濡れたが、なんだかそれすら嬉しかった。
家にいると、体が雨に濡れることなどない。
狭い家で、単調すぎる景色と生活に恐らく飽きているのだろう。
以前は、毎日外に出ることが怖かった。予想外のものが突然現れすぎる。人と話したり接したりすることによる疲弊が大きすぎる。
家にいれば不快なことなどそう起きない。
だから家が好きだった。
今も、家は好きだ。
外に出るストレスと比べたら、在宅のストレスなんて吹けば飛ぶようなものである。
それでも、これはこれで滅入ってくるものなんだなと知った。
好きなときに好きな場所へ出かけられない状況で家にいるという点が大きいだろう。
マクドナルドをただモバイルオーダーして雨に濡れて帰っただけだ。
でもやたら楽しかった。
娯楽のなさゆえに、娯楽の感度が高くなっている。
今、もし旅行に出ていいですよとなったら、楽しさで体が弾け飛ぶ気がする。
とりあえず今は、そういう些細な楽しみで日々をつないでいくことにする。
まだ思いついていないだけの楽しいことは無数にあるはずだ。