占いに向いてないということは言える
「あなたは人よりもエネルギーが余ってるので、少し忙しい位の仕事をしてないと消化不良になるわね。」
前職を辞めてしばらく無職をしていた頃、占いでそんなことを言われた。
前職は(自分の体感では)比較的忙しい環境で、調子を悪くし退職した。
忙しい仕事は向いていないと思っていた。
次に仕事をするなら、できるだけ体力的に優しく、定時で帰宅できる職業が良い。
そう思って就職活動をしていた最中だった。
私が希望する職種を聞いた占い師は、
「あんまり向いてないわね。」
ともう少しオブラートに包んだ言い方だったが、そう言った。
「じゃあ、どんな仕事が向いてますか?」
私が聞くと占い師は少し考え答えた。
「美容師がいいと思うわ。」
その一言で私はこの占い師を信じないことにした。
美容室と私の精神的距離感は、地球から冥王星くらいだ。
お洒落への関心度ランキング(全国民対象)を作ったら、下位にいく自信がある。
なので、言われたことはさっさと忘れてしまおうと思ったが、思いの外忘れることができない。
性格の問題だと思うが、私は占いに縛られやすい。
というか、他者の言葉に縛られやすい。
あなたってこういう人間ですよね、と言われることが少ないからだろうか。
自分で自分のことがわからず、自信がないからだろうか。
あなたはこういう人間ですよ、と損得勘定のない間柄の、全くの他人(占い師)が言う。
それは案外鋭く心に刺さる。
その後私は、占い師に向いてないと言われた希望の職種に就職した。
向き不向きは、よくわからないままだ。
昔読んだ本の受け売りだが、大概のことは「どちらかといえば向いてる・向いてない」程度のラインを行ったり来たりするだけだというのが、私の考え方だ。
たとえ美容師になり天職というほど向いていたとしても、向いていないかも!と思う瞬間は必ずあるんじゃないだろうか。
学生時代のアルバイトから、私はどこで何の仕事をしていても、めちゃくちゃ仕事ができるわけではなく、むしろ並みより色々できないが、居ないよりは居た方が良いような、そんな感じだった。
そしてどこも、辞める間際まで引き止められようとも、私が居なくなって潰れる職場なんて一つもなかった。
私一人辞めたところで、本当に全然どうにでもなる。
じゃあ次は何の仕事をしよう?
わからない。
どこで何をしても、そんなに変わらない私は、何をすればいいんだろう。
美容師が天職なのはデタラメだと思うが、冒頭に言われた「消化不良になる」は、あながち間違ってないと最近感じる。
体力はない方だ。
立っている時は常に「座りたい」と思っている。
座っている時は「横になりたい」と思っている。
だから、「人よりエネルギーが余ってる」という言葉も全然信じていなかった。
転職先の職場環境は、体力的に優しかった。
仕事外の自分の時間も十分に確保できる。
仕事から帰って、途中スーパーで食材を買い、まだ夕暮れのうっすら明るい部屋で味噌汁やおかずを作る。
洗濯機を回し、夕方のテレビ番組を流しながら夕飯を食べる。
寝るまでは好きに過ごせて、長風呂しながら読書もできる。
なんて、穏やかな暮らし。
家事をする余力のある生活を送れるだなんて!と最初のころは感動していた。
私はやっと人間としてスタートラインに立ったのだと思った。
それなのに。
この暮らしが続けばいいと思えなくなってきていた。
なんだかつまらない。
死んだように眠る時間が積み重なった。
それにも飽きた頃、推し(過去記事参照)にはまった。
しかし、推しを追う活動にも限度がある。
毎日のように情報の発信があるわけではない。
過去に配信された動画などを繰り返し観ては、なんだか頭がモヤモヤとしていく。
推しがどうということじゃない、推しはいつでも輝いている。
問題は私だ。
「エネルギーの消化不良」
じゃあ、また心身を狂わせるほどの仕事をしたいのか?
それは嫌だ。
どこへ行こう。何をしよう。
エネルギーを消化不良にせず、忙しさに殺されることのない仕事なんてあるのか。
推しの新しい仕事が決まった。
嬉しい!という気持ちと同時に、何かヒヤリとした感情が湧いた。
なんだろうと探ると、それは嫉妬だった。
驚いた。
役者さんである推しと、自分の仕事は何も共通項がない。
仕事を愛し向上心をもち努力をしている推しに、何の努力もしていない私が。
そもそも立っている土俵が全然違うし、嫉妬というのはもっと身近な人間に対して湧くはずの感情だ。
なんだろう、これは良くない気がする。
自分の感情の整理はつかないが、それだけは思った。
「夢を叶えたい。」
というようなことを時折推しは口にした。
私はそれを応援している。
新しい仕事が決まり、思っていた以上のスピードで、推しは夢を叶えていこうとしていることに気付いた。
当たり前だ。夢は叶えるものだ。早い方がいい。
叶えるための努力も、きっと見えないところでめちゃくちゃしていることだろう。
そんな瞬間が、自分の人生には一秒でもあったのか。
私は、変わりたいんだと思う。
どこへ行っても変われない私から、変わりたい。