銭湯通い
数日前から背中が痛い。
何かの病か?
と疑ったが、とりあえずまだ背中が痛いだけなので、様子を見ている。
体が凝り固まっている感じがした。
急に寒くなったのも要因の一つだろう。
そうだ、銭湯行こう。
家からそう遠くない所に銭湯はある。
以前は時々行っていたが、夏場は暑くて足が遠のき、それからなんとなく行ってなかった。
銭湯は「スパ」というよりは「公衆浴場」といった趣の、昔ながらのところだ。
お客さんは常に2~4人程度だ。
なんとなく無言で気を遣いあい、裸で同じ湯に浸かってるのに1~2mくらい距離をとる。
恐らく以前なら入浴しながら談笑していたであろう人たちは、先に出るときだけ「お先に!」と声を掛け合っている。
以前来たときよりは静かになった。
元々賑やかというほどではなかったけれど。
静かな空気で湯にただ浸かるのは良いものだ。
水音だけがする浴場で、他にすることもなく考え事にふける。
しばしば憂鬱なことを考えてしまうが、強制的に体が暖まると、暗いところに落ちずに済む。
触れ合うようなことは勿論ないし、全員他人だが、物理的に他人のぬくもりのようなものを少し感じる。
裸だからだろうか。
孤独は孤独なのだが、一人で膝を抱えて堪え忍ぶ孤独感は降ってこない。
背中は少しよくなった。
併せて体操を始めたので、そっちの効果のような気もする。
私はとにかく存在感を消して入浴しているが、時々ふいに優しくしてもらえることがある。
ドライヤーの順番を譲ってもらえたり、
椅子に置いていたタオルを片付けてどうぞと言われたり、
店員さんが朗らかに挨拶をしてくれたり。
なんの掛け値もない、その人のそのままの優しさを差し出されると、とても素直な気持ちになる。
刺々しくハリネズミのように構えながら暮らしている日々と、分断された空間が銭湯にはある。
年末年始は帰省できない。
人にもそんなには会えないだろう。
それでも、私には銭湯があるから。
そう思うと少し大丈夫な気持ちになる。