秋だ
数日前、玄関のドアを開けた瞬間にキンモクセイの香りが飛び込んできた。
秋だ。
数週間、毎日が楽しみで寝つきが異常に悪かった。
だが身体は軽かった。
眠らなくても元気だと思った。
だが、秋だ。
秋の到来と共に私の身体は平時の状態を取り戻したらしい。
眠らないと身体はだるい。夜に眠気もちゃんとくる。
一つ前の記事で、推しへの気持ち・応援スタンスへの戸惑いを書き連ねた。
それもこの秋の到来とともに、穏やかなものになった。
今まで通り好きなことには変わらないが、本人に迷惑をかける可能性を感じるほどの熱烈な感情はない。
飲み物を、冷たいものから温かいものに変えた。
温かい飲み物は、飲むと胃に落ちてそこからじわりと身体を暖かくする。
夏は、漠然と焦る。
何かをしなければならないような、追い立てられる気持ちになる。
暑さと、晴ればかりな気候。
謎の無敵感みたいなものが湧いてきて、やたらに活動したりする。
夏を手に入れなければならない。
私だけの夏を。
今年こそ手に入れなければならない。
そして夏は終わる。
大抵何も手に入らないまま、夏は終わる。
秋は突然始まる。
夏の終わりを引き摺った私の時間が、キンモクセイの香りでぶった切られる。
ここからはもう、秋です。
秋は、どことなく孤独だ。
寂寥感というものなのか。
だが、それは嫌なものじゃない。
馴染みのある、私だけの孤独と自由がある。
何かに急き立てられることもない。
私だけの秋を、毎年ちゃんと手にしている気がする。
もうすぐ寒さに葉を散らす木が、静かに染まっていく。
夏場に見られる勢いはない。
淡々と日を浴び、そこにある。
さあ、眠ろう。
血湧き肉躍るばかりが、楽しいということではない。