まだ寝てていいよ

思いついたことをテキトーに

花の名前を調べない

 

「なんの花が好き?」

何気なく友人が尋ねてきた。

花についてあまり考えたことがなかった。

「桜かな、ソメイヨシノ。」

「へー、なんか意外だな。」

「あなたは?」

友人は、耳慣れない花の名前を口にした。

どんな花なのか聞くと、木に咲く、白い花だと話した。

「学校の近所に咲くよ。今は季節じゃないけど、時期になったら綺麗なんだ。」

 

花が咲く時期になっても、私は見に行かなかった。

学校の近所といったその場所は、近くであってもわざわざ行かないと通らない所だった。

いつでも行ける、今じゃなくてもいいだろう。

そう思っているうちに季節は過ぎ、年数が経ち、卒業すれば学校からも遠くなった。

 

でも、その花の名前は覚えていた。

耳慣れない名前だったけど、覚えやすい字のならびだった。

 

白くて木に咲く美しい花。

 

友人とは卒業を機に離れた場所に住むようになり、会うのも年に何度かになった。

私は友人のことをとても大切に思っていた。

 

就職し、根性なしの自分は大変な思いをすることが日常茶飯事だった。

木に咲く白い花を見つけると、これが彼女の言っていた花ではないかと思った。

 

会うことは減っても時々電話で近況を話した。

どういった流れだったか、その花の話をした。

「木に咲く白い花を見ると、あなたが言っていた花かな?と思う。結局まだ正解は知らない。」

彼女がなんと答えたかはよく覚えてないけど、そっかと簡単な返事をされた気がする。

 

検索すれば簡単に出てくる。

そんなことはわかっている。

 

数年経ち、彼女とはもう昔のようには会ったり話したりできないかもしれないと思うようになった。

お互い変わってしまった。

人が変わるのは当たり前で、それでも続く友人関係の方が多い。

なのに、もう続けられないと思ったのは、恐らく私が彼女を大切だと思いすぎたせいかもしれない。

私が大切だと思って信じた姿は、もういない。

そう感じた瞬間に、気持ちが冷めていった。

彼女も同じように思ったのかもしれない。

上滑りするような会話に、もう昔の温度はなくなった。

 

それでも、木に咲く白い花を見ると、この花かな?と思う。

いっそ検索してしまおうと思ったけれど、なんとなくできずにいる。